私たちが考えているトロピカル・モダンニズム建築の在り方が、21世紀の都市建築づくりのヒントになります。
インドネシア現代建築について、建築ジャーナルNo.1252 2016年5月号『インドネシアのトロピカル・モダン』の中で、建築史家の五十嵐太郎氏は以下のように述べています。

「温暖な気候を生かし、モダニズムを独自に展開させた建築である。 例えば、強い日射を避けて影だまりとなる居場所をつくるピロティ、たくましい成長力が感じられる植栽に覆われた屋上庭園、そして完全に密閉できない半屋外の部屋、全開放的な空間がめずらしくないことだ。 これらはいわばモダニズムが発明した建築の要素である。 壁がないフレームとスラブだけの空間も、まるでル・コルビュジエのドミノそのものだ。 屋上庭園は日光浴や健康な体操の場、ピロティは建築を大地と切り離して、自由な動きをもたらし、壁に頼らない造形原理を示すものだった。 が、インドネシアではそれをさらに先に進め、発祥の地であるヨーロッパでは想像できない応用がなされている。 」
現代日本の住宅政策で高気密・高断熱の箱型建築のさらなる高性能化のムーブメントがある一方で、インドネシアなど東南アジアで発展した全開放建築タイプがさらに世界的に発展し普及し今後、地球温暖化、人口減少、高齢化社会に適合する新しいタイプの建築になると予想されます。敷地に建物という箱を置き自然環境と連続性のない外部と内部を隔絶した建築の作り方が、人々の意識の問題も含め、地球温暖化につながる自然環境問題を引き起こしてきました。モダニズム建築の原動力であった平面や立面を従来のレンガ造を主とする壁建築からの解放が達成され今、これからの建築づくりは、外部環境と隔絶されたガラスや壁が主体の箱建築からの解放がムーブメントになっていきます。