都市の中にガーデンをつくり、そのガーデンの中にカフェ、住まい、オフィス、ショップ、ホテルという機能を配置します。奥行の長い商家や長屋の中庭、所謂コートハウスのように平面的に配置する一般的なガーデンもあれば、高層建築の中間層に配置する空中ガーデンや屋上ガーデン、さらに建築的にガーデンを構築するステップガーデンもあります。
そこで、ガーデンを生活空間や商業空間に取り込んだ建築タイプ「ガーデン・アーキテクチャー」の価値向上について考えてみたいと思います。
現在の行政制度の中で分かりやすいガーデン(緑化)の価値指標では、都市行政で行われている総合設計制度です。公開空地の緑化率を満たす建築計画について、高さ制限や容積率の緩和される制度のことで、一般の建築基準より規模の大きな建築物をつくれます。しかし、この制度は高度経済成長期1971年制定で、現在の都市空洞化、人口減少、少子高齢化社会に向けたものではありません。この規制緩和で巨大化した都市再開発プロジェクト内の建築コンテンツの在り方などについては、本質的な議論の余地ありですが。

一方で、いま私たちの周りで問題となっているのは、地球環境、都市空洞化、人口減少、少子高齢化に起因する都市問題、特に老朽化した施設や空地、空家への対策やその活用法、必要不可欠な福祉施設についてであり、それらの問題を解決していく価値観の共有や社会制度の必要性です。都市再開発プロジェクトの新しい箱型建築だけではなく、地域生活に身近で必要な機能空間を絞り込み、余っている既存空間をガーデン一体の機能空間として再利用、再活用し、都市の空洞化を改善していくことにガーデンを生活空間や商業空間に取り込んだ「ガーデン・アーキテクチャー」の可能性があります。例えば、地域の銭湯を温水プールガーデンとした緑豊かなカフェレストランバーに改装するなど。

同時に、都市空洞化を食い止めるための事業者や住民への補助金や都市計画税や固定資産税、相続税の優遇などの制度、空地や空家の有効活用と生活やビジネス空間の価値向上への意識改革など、社会課題解決のためのエコシステムを地方都市の「小さなまちづくり」としてタウンマネジメントしていく必要性を改めて感じます。
今後、地球環境、都市空洞化、人口減少、少子高齢化への建築的な解決手法として、トロピカル・モダン建築を発展させた「ガーデン・アーキテクチャー」のポテンシャルを活かすプロジェクトを目指しています。