消費社会のマーケットでは、新品が価値のピークで時間の経過とともに価値が下がっていきます。車も住宅も新規に購入した時から価値が下がっていくのは、それらが消費対象の商品だからです。
一方で投資社会のマーケットでは、古めいたヴィンテージ感や経年変化とともに価値が上がっていきます。これからの時代、投資対象として必要なものは、時間の経過とともに付加価値を生み出す「増価蓄積」資産です。


※ヴィンテージ(Vintage)とは、完成度が高く、古くても価値が高い、年代物のアイテム、または商品のことを示しています。
そこで必要となるのは、ヴィンテージの価値観をキーコンセプトに据えた事業開発手法です。この手法をより分かりやすく理解するためには、現代社会で多く見られる消費されるモノづくりを俯瞰し、時間とともに価値が高まるモノについて考えたいと思います。
消費から投資へ
現代日本の都市再開発で見られる建築的な状況は、IOTやAIを組み込んだデジタル志向のテクノロジーによる省エネやセキュリティ設備に加え、運搬や組み立てしやすいプレファブ化された乾式工法の建物です。数十年後には現在再開発されている状況を繰り返し、再びスクラップ&ビルドの消費対象となり、その廃棄物や新規開発は地球環境へ繰り返し負荷を与えることになるでしょう。
一方で、このような消費されるモノづくりとは真逆な建築的な状況は、東南アジア、特にインドネシアの建築家によって実験が繰り返され、独自に発展してきました。
それは、以前紹介した記事『トロピカルモダニズム建築』で紹介しているような『ロー・テクノロジーの環境建築化した空間やスクラップ&ビルドに向かない湿式工法の建築』に見出すことができます。
スクラップ&ビルドを前提にしないアナログ志向の空間装置、経年変化を前提とした建築材料、例えばレンガ、タイル、塗装、木などの自然由来の素材選定が行われ、経年変化が生み出すヴィンテージ感を想定した建築的な設えとなっています。
以下は、南ジャカルタにあるシェアハウスの事例です。プライベート空間はベッドと机と洗面トイレの最小限の機能に絞り込み、共用部分をゆとりある生活空間としています。






地球環境への負荷軽減をめざす少子高齢化の現在、不動産投資は今までのような箱ユニットを効率的に供給し短期間で消費していくスタイルから、地域など場所に固有な環境に合わせた建設投資を行い、長期にわたって豊かな体験、ライフスタイルを提供することに主軸が移っています。
このような動きが加速し、真の持続可能な社会を早期に実現できるようプロジェクトを積み上げ、「減価償却」から「増価蓄積」への発想転換が必要になっています。