空間をグルメやショッピングのようにカジュアルに日常生活に取り込む『空間さんぽ』プロジェクト。
この『空間さんぽ・X』では、ビジネスに役立つ空間価値の魅力的な事例について紹介しています。
今回紹介するプロジェクトは西ジャカルタにあるカフェ兼イベントスペース『Tanatap Coffee, Meruya』で、自然環境に近い条件を保ちながら快適な空間をめざす実験的な建築です。
上の写真のように、建築的な工夫としては、太陽熱による暖気をコントロールする大空間を確保する際に、太陽の軌道に合わせて切妻屋根で内部空間を覆うことで日射を効率的に遮り、光井戸を適宜設けることで内部照度を確保し、さらに必要最小限のエアコンや照明装置を設置することで、エネルギー負荷を軽減していることです。
また、コロナ禍前には建物全体をオフィス用途で使用するつもりであった1階部分をカフェやイベントスペースとすることで、景気の良し悪しにより空間利用も調整しています。

Photograph by Liandro N. I. Siringoringo
ここでは、自然や経済という不確定な外的条件を調整する建築というコンセプトが実践されており、建築空間とビジネスプランは相互に融合し、フレキシビリティが確保されています。
現在、特に日本などの先進諸国では既に少子高齢化による人口減少時代になっています。そこでは、建築や都市空間における人口密度のコントロールが課題となりますが、少ない利用者のために小さい空間という今までのような箱型建築を置くという発想とは異なる余剰空間の活用方法へのヒントを与えてくれる事例です。

トロピカルモダン建築の特徴である「ピロティ」や「屋上庭園」を生活空間化する試みは、利用者にとって敵あるいは味方にもなりえる自然環境との距離感をデザインすることです。