現代の建築計画は、容積率を基準に進められています。
床面積に対して単価を設定し、その総体が不動産価値の基準となります。そのため行政は容積率緩和をボーナスとする制度を採用し、都市の再開発を誘導しています。
この価値指標は人口増加の高度経済成長期には理にかなっている方法論ですが、現代日本の少子高齢化、経済衰退化、観光立国化、そしてコロナ禍後の働き方多様化の時代にあって、今までと同じ手法による建築計画は、長期的な視点で考える事業計画としてはコンセプトの段階から破綻していると考えるのが自然です。実際に20世紀に計画されたオフィスビルなど最大限度の容積化と空間効率化のためのグリッド状の均質空間は、すでにスクラップ&ビルドの再開発対象となっています。
コトの体験を誘導する空間価値
このような状況で建築空間の価値転換が進んでおり、よく言われるように『モノからコト』『モノの所有からコトの体験』へとその意識変化が浸透し始めています。そこで今、建設を伴う事業計画を考える際に何を手掛かりにしていくべきなのでしょうか?
私たちは、空間価値を『モダニズムの5原則(※)』の中で、特に日本で取り残されてきた2原則『ピロティ』『屋上庭園』をこれからの建築づくりの手がかりとしたいと思っています。
※ル・コルビュジエが提唱したモダニズムの5原則「ピロティ」「屋上庭園」「自由な平面」「自由な立面」「水平連続窓」を造形理念としたもの


別のページ『トロピカル・モダニズムとは?』で紹介しているように、これら『ピロティ』『屋上庭園』の2原則を独自に発展させてきた『トロピカル・モダニズム建築』にヒントを得て、これからの建築づくりを進めていこうというのが、私たちの建築プロデュースのテーマです。
新しいライフスタイルを体験できる空間

魅力的な空間価値を提供するために『ピロティ』『屋上庭園』を超え、”生活空間化した”屋上庭園、さらに屋上に『ピロティ』を組み込んだ『ルーフトップ・ピロティ』を建築空間に取り込み、いろいろな季節の空間を楽しみながら時間を過ごす『オープンエアなライフスタイル』を体験できる空間に価値を見出し、『モノからコト』『モノの所有からコトの体験』の時代に相応しい建築空間づくりを進めています。モノ主体の価値観からコト主体の価値観へ、建築空間の価値指標も変わる時が到来しています。