トロピカル・モダニズムとはどのような理念なのか?

1.ピロティ
2.自由なファサード
3.横長の窓
4.自由な平面
5.屋上庭園
20世紀の現代建築はモダニズムの2.3.4原則を中心に機能的なガラス建築を発展させ、この流れは今後も続くひとつの傾向ではありますが、モダニズム建築の理念である『屋上庭園』・『ピロティ』といった原則については抜け落ち、あまり配慮されていないのが現実です。
インドネシアの現代建築家が設計した建築の特徴について
建築ジャーナルNo.1252 2016年5月号『インドネシアのトロピカル・モダン』の中で、建築史家の五十嵐太郎氏は以下のように述べています。
「温暖な気候を生かし、モダニズムを独自に展開させた建築である。 例えば、強い日射を避けて影だまりとなる居場所をつくるピロティ、たくましい成長力が感じられる植栽に覆われた屋上庭園、そして完全に密閉できない半屋外の部屋、全開放的な空間がめずらしくないことだ。 これらはいわばモダニズムが発明した建築の要素である。 壁がないフレームとスラブだけの空間も、まるでル・コルビュジエのドミノそのものだ。 屋上庭園は日光浴や健康な体操の場、ピロティは建築を大地と切り離して、自由な動きをもたらし、壁に頼らない造形原理を示すものだった。 が、インドネシアではそれをさらに先に進め、発祥の地であるヨーロッパでは想像できない応用がなされている。 」
私たちが考えているトロピカル・モダンニズム建築は、20世紀のモダニズム建築の在り方を捉え直す21世紀の建築の在り方のひとつのムーブメントになりうると直感しています。
現代化のプロセスで抜け落ちたものがもたらす課題
そこで、世界的な地球環境への負荷が課題となっている現状で、これらの理念について深堀し建築づくりに活かしていく必要を感じています。なぜか?
それは、近代化のプロセス、工業化による偏った産業発展が現在の課題を生み出してきたという見方が成立するからです。
そこで、地球温暖化により『亜熱帯化しつつある』日本の建築デザインを考える際に、東南アジアで独自に発展したモダニズム建築、つまり『屋上庭園』・『ピロティ』を発展させてきた『トロピカル・モダニズム建築』から日常生活空間のヒントを得て、これからの地球環境都市の新しい建築タイプを模索していきます。
但し、日本の気候には台風や冬があるため、直接的な適用ではなく、建築的工夫や補完的装置を併用することは必要になります。
地球環境にやさしい建築の普及
トロピカルモダニズムの建築の特徴は、『屋上庭園』・『ピロティ』を有効活用し、半屋外、もしくは全開放(オープンエア)の生活空間とし、さらに『土・水・緑・光』などの自然と接続することにあります。
このような快適で魅力ある『生活や商業の場所』をつくりあげ、地球環境にやさしい建築、太陽光や風や空気の流れ、直射日光の取入れ方などに配慮した建築プロジェクトが普及していくことの価値感をより多くの方と共有していきたいと思います。
※トロピカル・アーバンリゾート空間の事例集は、以下のPinterestにてご覧になれます。